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竹内「さっきの聞かれてる」
竹内はハァッとため息をついて頭を抱えた。矢野は黙って窓際に座り早足で帰っていく奏を見下ろした。
僕はバカだ。
息も整わない間に自分の部屋に戻るとコンタクトをケースにしまい、元あったクローゼットの奥へ押し込んだ。夕焼けで外が赤く染まる中、眼鏡をかけて鏡を見た。
僕が2人を見るにはこのレンズ越しがちょうどいいんだ。
さっきの2人の言葉が頭を過ぎり、零れそうになった涙を堪えた。
でもなんでだろう。
分かってたはずなのに胸が痛くてすごくつらい。
きっと今まで幸せ過ぎたせいかもな。
調子にのってたんだから自業自得じゃないか。
気持ち悪い……か。
矢野の言葉に酷くショックを受けていた。
唇をそっとなぞる。
矢野くんが触れるのは僕の反応を楽しむための遊び。そんなの当たり前じゃないか。
ズキン.......
ズキン........
痛い。
ぎゅっと胸のあたりを掴み蹲った。
奏「……っはぁ…」
詰まった息を震えながら吐いた。
もう、全部忘れよう。
この数ヶ月の出来事も、この想いも。
せめて辛い思い出じゃなく、幸せないい思い出として僕の中で残しておきたい。
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