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次の日の朝、奏はいつものように席に着いた。
竹内「今井おはよ、昨日あれから大丈夫だった?」
少し遠くに座っていた矢野がその言葉に振り向いた。
奏「う、うん、大丈夫だったよ」
竹内「そんなら良かった、あれからまた降ってきたからめっちゃ走って帰ったよ」
竹内につられ、奏もヘヘッと笑った。
矢野は無言のままそのやり取りを聞いていた。
矢野「昨日アオと何があった?」
奏は体育の時間に毎度の様に押し付けられる道具を倉庫に運んでいると矢野が腕を組み出口に仁王立ちしていた。
奏「あ......掃除終わって帰ろうとしたら声掛けてくれて.....雨降ってたから少し話した」
矢野「それだけ?」
奏「........うん」
奏はふと思い出し、自然と顔がほころぶ。
矢野「またどうせ掃除サボってボーッと野球部でも見ながらモタモタしてたんだろ」
奏「えっ!?」
なっなんで知ってるの!?
奏は目を丸くし赤い顔で口をパクパクさせた。
矢野「まぁ、俺に感謝しろよ」
まぁ…否定はしない。
奏「うん........ありがとう」
素直に礼を言う奏を見て再び矢野は口元に手の甲を押し当てた。
矢野「お前ほんとバカだな」
奏「バッバカ?!」
ガーン.........え?なんで?
少し落ち込みながらコーンを定位置に置き矢野の横を通り倉庫から出ようとすると目の前に立ちはだかれた。
矢野「お前放課後付き合え」
奏「えと..........今日は予定が.........」
矢野「は?何の?」
奏「.........いや…何もない......」
矢野の目つきが鋭くなったのに気付き思わず否定した。
本当はコンタクト合わせに行こうと思ったんだけど.....やめとこう。
矢野は肩を竦めた奏を見下す様に見ると背を向けさっさと歩き出した。
たまにすごく怖いな........
まぁ怖い方がほとんどだけど。
大きい背中と距離を置きゆっくり教室に向かって歩き始めた。
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