* * 1 * *

25/31
190人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
図書室は、灯りがしぼられているのか、薄暗い部屋だった。 窓が縦長で細く、床や壁は全て木製でわずかに埃っぽい。 ドアから入るとカウンターがあり、寡黙そうな女性が目を光らせていた。 「図書室の利用は初めてですね? 用紙にクラスと名前を」 新入生だとすぐにわかったのか、利用方法を説明された。 貸し出しは、許可がいること。 本を損傷させないこと。 日に当てないこと。 細かな注意にユーキは面倒を感じたが、書籍は貴重品であり、守らないと罰則まであった。 カウンターの手前にテーブルが三つ。 その先に本棚が横にズラリと並ぶ。 静かにそうっと、本棚に進む二人。 図書室管理の女性から、いぶかしげに見られている。 本は辞典のような物から専門的な物まで、きちんと分類され、きれいに収められていた。 学校の授業で習うのだろう、基本的な魔法の知識から、魔法薬、魔法陣学、武器の指南書、武器製造の指南書、戦闘学と様々だ。 レイが興味深そうに背表紙を眺める。 学生の域を出ない内容だが、傾向が分かれば対策が打てる。 皇国生産の書籍は貴重だった。時間があれば目を通そうと決めて、彼はユーキを探す。 先に歩いて進んだ金髪が、本棚越しに見えた。奥をうかがっている。 目的の女子生徒は本棚の一番奥、1人がけの椅子に座っていた。 ピアスに触れる。 『ユーキは離れて』 『……同姓の方が、話しかけやすくないか?』 『万が一があると、困る』 『? わかった』 金髪がちょっと離れた本棚に移動してから、背表紙に目を向けたまま、レイは奥に進んだ。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!