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「アハハハハッ! 一番のライバルは父親だって話、そういえばよく聞くけど、そこまであからさまに遼太の前に立ちはだかるとはね」
誠が可笑しそうに笑っていた。
仕事終わりのサラリーマンで賑わう焼き鳥屋は、煙とグラスがぶつかり合う音、そして酔っ払いのおじさん達の陽気な声で溢れ返っていた。
誠とは、メールや電話で連絡し合う。たまに互いの予定が合えば、こうして呑む。今夜は、俺から誘ってみたのだが。
「冗談じゃねぇ。ずーっともう1人の父親だと思っていたけど、あんなのもう父親じゃねぇ」
升の中のグラスに注がれた日本酒に口をつけながら誠が上目遣いで俺を見て、ニッと笑って言った。
「向こうも同じ事思ってるよ」
向こうも同じこと、か。なるほど。ケンさんにしてみたら、息子同然にかわいがってきた男が、ってことか。
俺はため息を吐いた。
「お陰様で、ひよと過ごす時間、激減した……」
電話も危険で、メールくらいでしかやり取り出来ていない。学校で話すのはまず出来ないからな。
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