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今まで、手を伸ばせばすぐ届くところにいたのに、急にメールという媒体を通してだけのやり取りしかできなくなると、それはもうまどろっこしいことこの上ない。そうなると、当然、コミュニケーションが足りなくなる。
募るのは、イライラばかりだ。
俺は、日本酒を旨そうに呑む誠の綺麗な顔見て、ちょっとムカ。
「あ~あ、その余裕綽々の美しいお顔が焦るとこ、久々見せていただきたいね」
もうこれは八つ当たりだ。
クスッと笑った誠は俺のグラスにビールを注ぎながら、言う。
「高校時代に散々見せたでしょ」
確かにそうだ。あの頃は、コイツは俺がいなけりゃ、って感じだったのに、いつの間にか……なんか立場逆転してないか?
なんだか複雑な心境になって注がれたビールをグイと飲み干した時、誠が思い出したように口を開いた。
「そう言えば、この間さ、ひよりちゃんに会って」
「ひよりに……会った?」
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