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「?」
「……。いい、シャワー浴びてくる。話があるから、先にベッドで休んでて。寝るなよ?」
少し怒った背中がいつも通りで、深山は睫毛を伏せる。本当に終わってしまうのだと、そう思った。
少しその場で休んだ後、体液の後始末をしようと思いタオルを探した。深山が着ていたガウンしかなかったので、浮橋が向かったバスルームへタオルを取りに足を向ける。
そこで聞こえてきたのは、中で誰かと電話で話している浮橋の声だった。シャワーでなく先に入れておいた湯舟に浸かっているらしく、声が反響して聞こえてきた。
「だから、そう言ってるだろ? ちゃんと、やったって。入れてねーよ。してませんー」
響く浮橋の声。慌ててタオルだけを取って去ろうとした深山の耳に、苛立った声が届く。思わず足を止めて、すりガラスの向こう側を見た。
「当たり前だろ? 何を好き好んで……。俺だって我慢して、どうにかこうにかやり遂げたんだよ。それよか、部屋はどうなった? 一緒に住む部屋」
電話の相手が例の彼女だと、すぐに分かった。
タオルを掴んだ指先が、震え出す。
俯いたまま動けずにいると、浮橋は深山の存在に気付く様子もなく話を続けた。
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