2628人が本棚に入れています
本棚に追加
「え、千鳥………?」
駅が向かって歩く中、何故こんなところにいるのか高校時代からの友人で大切な相談相手が立っていた。
儚げな印象の強い綺麗な顔。千鳥は浮橋の幼馴染で、小学校時代からの親友でもある。高校入学を機に深山とも親しくなった。浮橋に千鳥を紹介された時、あまりの美しさにしばらく見惚れて動けなかったほどだ。
「どうして……」
「大丈夫かなって。ちょっと、心配で」
優しい友人の言葉に、顔を伏せる。すぐに顔をあげて、頷いた。上手く笑えたはずなのに、千鳥は悲しそうに微笑んで頭を撫でてくる。いつから待っていてくれたのか、千鳥の白い手のひらはとても冷たかった。
「ラ・ロに行こうか。今日は僕の奢り」
「でも」
「いいから」
強引に腕を引かれて、駅の近くにある行きつけのバーに誘われた。ラ・ロはこの近辺ではゲイが集まる店として有名だ。深山は千鳥に教えてもらった。
千鳥が同じ類の人間だと知ったのは大学に入ってからだ。浮橋にずっと片思いしている深山が、去年三人で飲んでいた際に告白してからである。
最初のコメントを投稿しよう!