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千鳥は深山のギムレットを口に運び、頬杖をついたまま宙を眺めている。
「僕は、謝らないよ」
ギムレットを一気に煽り、空のグラスをカウンターに置いた千鳥が深山を見た。綺麗な顔が今にも泣き出しそうで、こんなに近くにいながら何も気づかず相談ばかりしていた自分に激しい嫌悪と怒りを抱く。
千鳥は優しかった。いつも、いつでも。深山が周囲にからかわれている時、助けてくれたのは決まって彼だった。周囲の人間は、浮橋がいる時は深山をからかわなかったから。千鳥だけが味方でいてくれた。綺麗で自分以上に勉強ができて優しい千鳥は、浮橋と同じく憧れそのものだった。
何も言えずにいる深山に、千鳥がポツリ語り始める。
「……中学の頃から好きだった。でも、あいつ、バカみたいモテるしさ。諦めてた。男同士なんてとんてもないって、そんなカンジだったしね。……なのに、ミヤが酔いに任せて告白したらアッサリOKして。しかも、僕に相談するんだよ。ミヤ、覚えてなかっただろ? 告白したこと。これって付き合ってるうちに入るのかって。珍しく不安そうで、何度も……相談してくるんだ。人の気も知らないでさ」
「……」
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