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「お前に告白された時、正直驚いた。でも、泣きながら顔真っ赤にして好きだって言われて、悪い気はしなかった。だから最初は物珍しさと興味本位で、OKした。だけど、お前は何も覚えてなかった。なんか無性に腹立って……。勢いで、お前と付き合うって決めたんだ」
「分かってるよ。だから、もういいんだ」
「いいから、聞け。お前は人の話を聞かな過ぎる」
それは親にも常々言われていることで、深山は素直に口を閉じた。
自信のなさから気を回し過ぎて、よく空回りをする。勝手に決めつけて、確認も取らず傷つく前に逃げてしまう。それは、深山の悪い癖だった。
「付き合ってみて、やっぱ無理だと思ったら別れるつもりだった。生理的なもんは、どうしようもないだろ? ……なのに、お前すげぇ可愛くて。ちょっとしたことでも嬉しそうに笑うし、いっつもいじらしくて、俺のことばっかで。気付いたらドはまりしてて……」
浮橋の顔色が変わる。何か思い出しているのか、眉間に深い皺が寄った。
「お前が俺のこと好きなのが、良かった。気分がいいっていうか。俺のことに必死なの見て、気持ち良かったっていうか。多少好き勝手やっても怒らねーし。……そうしたら。姉貴に、お前は絶対にフラれるって断言された。あり得ねぇって思った。お前、俺のこと大好きだし。でも……、姉貴にそう言われて気付いたことが一つあった。お前さ、俺に一回もワガママ言ったことねーんだよ」
それは、そうだ。そんな真似が、できようはずもない。
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