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それでも深山は浮橋の傍にいたかった。引き立て役でもなんでも良かった。好きだったのだ。今でも好きだ。心から惚れている。
外見の凛々しさだけではない。喘息の持病持ちで、貧弱な体と勉強しか取り柄のなかった深山にとって浮橋は憧れそのものだ。一年間だけでも恋人として付き合えた。もう充分だ。
薬学部の深山は、もう二年大学に残る。卒業後は地元にも戻らず都内にも留まらず、新しい土地で就職するつもりだった。
「力、抜いてろよ。動くの禁止だからな」
ガウンを左右に開かれ、露になる深山の裸体。
気恥ずかしさに横を向けば、どうしても視界にモニターが入った。そこには、できれば隠しておきたかった秘密が有り体に曝け出されている。
成人男性であれば、あって当然の陰毛が一本残らず綺麗に剃られていた。さっき、どうしてもとねだる浮橋に負けて許した行為だ。
自分が見てもどうかと思うのだから、こんなものを記録に残すなど言語道断だ。
「少し、冷たいから」
言われてモニターを見ると、浮橋がジェルを塗り付けた滅菌済みのカテーテルを、今まさに尿道に差し込もうとしていた。
ヌルリとした、独特の感触が深山を襲う。思わず息を詰めた。すぐに浮橋から力を抜くように言われる。
「痛かったら、すぐ言えよ」
「っ、ぅ……ん」
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