前編

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 浮橋を見る。ゴム手袋を処理して、消毒ジェルで手指を消毒している彼。 「浮橋は、さ……その、こういうの、誰かとシタことあるの……?」  そう尋ねずにはいられぬほどに、やけに手慣れていた。高校時代から知っているが、男を相手にするのは深山が初めてだと思っていた。だが、違っていたのかもしれない。深山が知らないだけで。 「……どういう、意味?」  浮橋が手を止めて、こちらを向いた。  予想以上に低い、浮橋の声音。 「いや……、なんか慣れてるから」 「ミヤが初めてだよ。男のものなんか触れるかよ」 「……俺も男なんだけど」 「ミヤは特別だろ」  苦い笑みを浮かべて視線を落とす。特別だと言われても喜べない。この後に控えるサヨナラは、揺るぎないものだ。  それに、生粋のゲイである自分と彼では、住む世界が違うのだと改めて思い知った。男のものに触れることを嫌悪する彼と、恋愛対象が男だけの深山とは何もかもが違う。 「ミヤ、動かすぞ」 「え?」  訊き返すのが早いか、カテーテルを上下されるのが早いか。深山は無防備なところに刺激を受けて、一瞬で視界を潤ませた。  ゾクゾクとした感覚が体を駆け抜ける。  ジェルのお陰で痛みはない。ないが、奥にある何かがカテーテルに触れる度、感じたことのない感覚が全身に広がった。     
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