死が分かつまで

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 正直バス代も馬鹿にならない、その申し出を草間はありがたく受けた。そこから山のふもとまで三十分懐かしい話に花が咲いた。  「本当に会えてよかったです。会社を辞められた時とは違いますね。とても生き生きとしていらして。本当に良かった、お元気で」  送ってもらった礼を伝え、草間はけもの道を登って行った。山に入って五分も経たないうちに目の前には白亜が立っていた。  「ちょうどお迎えにあがろうと思っておりました」  いつものことだ、町から戻るとこの辺りで白亜が待っている。バスの時間を知っているのだろうと草間は思っていたが、今日はバスではなく車で送ってもらったのだ。いつもより一時間近く早い。それでも白亜は同じ場所で立っている。  「ああ、ただいま。よく帰りがわかったな」  「信弘さん、誰と一緒でした?誰かの臭いがする」  香水の匂いでも移ったのだろうかと鼻をシャツに近づけて匂いを嗅いでみるが何の匂いもしない。白亜の瞳が青く光ったように見えた。  「私を捨てていくのですか、みなと同じように」  「みなと同じ?誰のことを言っているのだ?」  「……あなたに捨てられたら、私はもう存在することさえ出来ない」  「白亜、落ち着け。どうした?俺がお前を置いてどこかへ行く事はない。分かっているだろう」     
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