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和彦から強引に承諾の返事をもぎ取って、物騒な父子が部屋から出ていこうとしたが、ふと何かを思い出したように賢吾だけが引き返してきた。
呆然としてベッドに腰掛けた和彦の肩に手をかけ、賢吾が耳元で囁いた。
「次に会うときは、たっぷり俺のものも舐めてもらうぞ」
間近で目が合うと、笑いかけられた。
ドアが閉まり、部屋には和彦と三田村だけとなる。なんの用だと睨みつけると、三田村は封筒を差し出してきた。
「先生の新しい部屋の鍵だ」
受け取る気にもなれず、和彦はベッドに仰向けで倒れ込む。天井を見上げながら三田村に問いかけた。
「三田村さん、あんた、ずっと組長についてるんなら、わかるだろ」
「何を」
「どのぐらいで、あの組長は〈オンナ〉に飽きるのか」
「……俺が知る限り、組長は、一人の〈女〉とは一度しか寝ない。多分、先生の聞きたい答えの参考にはならないだろうな」
鍵を置いて帰るよう言って、和彦は三田村に背を向けた。
余計なことを聞かなければよかったと思いながら。
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