第3話(2)

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 子供が強がっているわけでもなく、強い光を放つ目で千尋は淡々と話した。その言葉には、そこはかとなく凄みが漂っている。 「俺の家が普通だったら、全力で先生を口説いて、一緒にいてもらっただろうけど、現実はこうだ。しかも、先生はオヤジにあっさり奪われるし。そうなったら、俺が取れる手段なんて限られてる。先生は嫌で嫌で仕方ないだろうけど、俺はこのやり方を貫くよ。――先生をオヤジに独占させたくないから」 「千尋、お前……」  和彦は取られていた手を抜き取り、千尋の頬を撫でてやる。途端に、明るく笑いかけてきた。 「こいつもいろいろ考えてるなー、とかって、今思った? 胸がときめいたりとか」 「……シリアスを決めるつもりなら、もう少し堪えろ。胸がときめく暇もなかった」 「先生は、まじめな俺のほうがいい?」  千尋の手が首の後ろにかかり、額と額を押し当ててくる。三田村が運転していることなど、まるでお構いなしだ。 「まじめとかふざけているとかじゃなく、出会った頃のお前がいい。ぼくはもう、お前の本当の顔がどれなのか、わからなくなってきた」 「いつも先生に、悩みがなさそうだと言われてたときが、素の俺だよ」 「そうなのか?」     
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