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そうだよ、と洩らして、千尋に唇に軽くキスされた。和彦は慌てて頭を引くと、また運転席を気にする。いまさらキスしたところを見られるぐらい、なんでもないのだが――。
「三田村が気になる? この間、俺たちのすごいところを見られたばかりじゃん」
「見られた、じゃなく、お前が見せつけたんだ」
そうだっけ? というのが千尋の答えだった。呆れながら和彦が睨みつけると、悪びれた様子もなくにんまりと千尋は笑い、再び和彦は首の後ろに手がかかって引き寄せられた。
「――俺としては、先生って実は、見られるほうが燃えるタイプなんじゃないかと思ってるんだけど」
そう言って千尋に唇を啄ばまれる。千尋の目を間近に見つめながら、和彦はしみじみと感じたことがあった。
「お前と、あの組長はよく似てる。自信家で、いろいろと性質が悪い」
和彦がこう言うと、途端に千尋は顔をしかめる。
「超ショック。俺、バカって言われるより、オヤジに似てるって言われるほうが、嫌だ」
「だったら、これでおあいこだ。今さっき、ぼくを変態みたいに言っただろ」
千尋は少し考える表情を見せたあと、楽しそうに目を輝かせ、実にロクでもないことを提案してきた。
「試してみようよ。先生が、見られても平気かどうか」
「それはそれで問題ある――」
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