第23話(3)

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「鷹津は、先生からもらえる餌さえあったら満足だろうが、まあ、そういうわけにもいかん。――俺からも何か餌を与えないとな」  冗談めかしてはいるが、賢吾の言葉には毒気が滲み出ている。和彦が睨みつけると、低く笑い声を洩らして賢吾はやっと地図を畳んだ。  鷹津は、ただ働きはしない。和彦の〈番犬〉として働いた対価に、餌を欲しがる。一昨日、鷹津と会ったときにその餌を求められたが、体調のせいもあって断った。ただし、近いうちにまた鷹津と会って、しっかり餌を与えなくてはならないだろう。  この辺りの鷹津とのやり取りすら、和彦は賢吾に報告してあった。そのうえで、今の発言だ。 「そう怒るな、先生。県警が、花見会の監視強化を計画しているなんて、まだこちらの耳には入ってない情報だ。つまりそれだけ、県警は情報管理を徹底して、取り締まりに本気だという姿勢を見せているってことだ。花見会には、総和会の面子がかかっている。騒ぎを起こさず、招待客にも迷惑をかけず、粛々と花見会を行うことで、総和会は力を誇示する。例え警察であろうが、水を差すことはまかりならぬ、ってな」 「……恐ろしくなるほど、ヤクザの理論だな」 「他人事のように言っているが、先生はその花見会に招待されているんだぞ」     
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