第24話(2)

1/20
前へ
/2987ページ
次へ

第24話(2)

 深夜だというのに、本宅の空気はピンと張り詰めていた。  玄関に一歩足を踏み入れただけで和彦はそれを感じ取り、体が強張って動けなくなる。そんな和彦を追い立てるように、組員が声をかけてくる。 「先生、組長がお待ちです」  立ち竦んでいたところで、みっともなく引きずられていくだけだろう。微かに震えを帯びた息を吐き出してから、和彦は靴を脱いだ。  賢吾の部屋の前まで行くと、何も言わず組員は立ち去り、廊下には和彦だけが取り残される。なんと声をかけようかと逡巡していると、中から声がした。 「――入ってこい」  ビクリと身を震わせてから、まるで操られるように障子を開ける。一瞬意外に感じたが、賢吾はまだ浴衣に着替えてはいなかった。もしかすると、すでに寝る準備を整えていたものの、和彦の行動を知って再び着替えたのかもしれない。  とにかく賢吾は、一見平素と変わらない様子で座卓についていた。ぎこちなく障子を閉めた和彦は、賢吾の正面に座る。賢吾は、すぐには口を開かなかった。     
/2987ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8134人が本棚に入れています
本棚に追加