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ヤクザがこんな笑い方をするときは、人を食らうときだ。これまでの短いつき合いで、そんなことを学習した和彦は、小さく肩を震わせてから逃げるように別の部屋へと向かった。
夜からコーディネーターと打ち合わせをして、ファミレスで適当に食事を取ってから部屋に戻ってきたとき、和彦はもう、何もする気力が残っていなかった。ただ、汗をかいた不快さが我慢できず、三田村に頼んでバスタブに湯を溜めてもらう。
こんな生活に入る前までなら、何があっても自分一人ですべてこなさなければならなかったのだから、そういう意味では、ずいぶん優雅になったものだ。
ソファに転がって、夜のニュース番組を眺める。世間で起きていることに、すっかり興味が持てなくなっているが、それでもテレビをつけるのは習慣だ。
「――先生、湯が溜まった」
三田村に声をかけられ、体を起こす。よほど億劫そうに見えたのか、三田村は無表情のまま、それでいて声には気遣いを滲ませながら言った。
「今夜はゆっくり休めばいい。明日は予定が何も入ってないから」
「本当に、予定通りになればいいけどな。犬っころが、目を輝かせて転がり込んできそうな気がする」
三田村にもその可能性が否定できなかったらしく、黙り込まれてしまった。
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