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甘えるような声で言われ、大きくため息をついた和彦は勢いよく立ち上がり、扉を開ける。脱衣所の床の上に、千尋がぺたりと座り込んでいた。まるで、飼い主の指示を待つ犬っころのようだ。
和彦の裸を見て、千尋は大げさに目を丸くするが、一方の和彦は素っ気なくバスタオルを取り上げて髪を拭く。
「……急いでいるなら、プリンだけ置いて帰ったらどうだ」
「プリンなんて単なる理由で、先生の顔を見たかったんだよ」
「だったら、こうして見られて安心しただろ」
少しばかり意地悪を言ってみると、思った通り、千尋が唇を尖らせる。バスローブを羽織った和彦は、くしゃくしゃと千尋の頭を撫でた。
「実家に戻ってから、お前、子供っぽくなったんじゃないか」
「だったら、俺が本気出しても、先生平気?」
前触れもなく立ち上がった千尋に、いきなり腕を掴まれて壁に体を押し付けられる。目の前に迫ってきたのは、しなやかな体躯を持った若々しい肉食獣だ。さきほどまで、あざといほど子供っぽさを前面に出していたくせに、今はもう、したたかな笑みを浮かべて舌なめずりしていた。
発情している顔だと、和彦は思った。
千尋は、まだ湿りを帯びた和彦の肌に触れてくる。バスローブの紐を結んでいないため、何もかも千尋の前に晒したままなのだ。しずくが伝う首筋をゆっくりと舐め上げながら千尋が言う。
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