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千尋の唇を首筋に押し当てられたところで、和彦は弱音を吐きそうになる。もう、立っていられなかった。それに、思うさま、快感を貪りたくてたまらない。
「千、尋――」
和彦が口を開こうとしたとき、突然、側で派手な音楽が鳴った。千尋の携帯電話の呼出し音だ。最初は無視しようとしていた千尋だが、すぐに耐え切れなくなったらしく、渋々といった様子で電話に出た。
「もしもしっ」
荒っぽい口調で千尋が応じる間に、和彦は乱れた呼吸を整えながら、肩からずり落ちかけたバスローブを羽織り直し、しっかり紐を結ぶ。腰が疼いて、今にもその場に座り込んでしまいそうだ。
「あー、わかったよっ。すぐに降りる」
電話を切った千尋が、ふて腐れた顔で唇を尖らせる。すっかり格好を整えた和彦を見て、さらに機嫌が悪くなったようだ。和彦は何事もなかった顔をして、千尋の頭を撫でた。
「残念だったな、時間切れだ」
「……先生、なんか嬉しそう……」
「そりゃもう、お前がプリンをお土産にくれたからな」
好き勝手された仕返しとばかりに、ニヤニヤと笑いかけてやると、千尋が珍しく情けない顔となる。
「そんなにイジメないでよ……」
「人聞きの悪いこと言うな。イジメられたのは、むしろこっちだ。お呼びだろ。さっさと帰れ」
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