第4話(2)

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 飛び起きて身構えても不思議ではない状況だが、そんな危機感は和彦の中では湧き起こらない。なんといってもこの部屋にはまだ、賢吾の〈忠実な番犬〉が留まっているはずだ。帰っていいと和彦が言っても、その和彦が眠るまで、自分の務めを果たすような男なのだ。だから、今もまだ――。  大きく温かな手に頬を撫でられ、指先で唇をくすぐられる。それから、半ば脱げかけたバスローブの前を完全に開かれていた。覆い被さっている〈誰か〉に、体のすべてを曝け出すことになる。  ゆっくりと押し寄せてこようとする羞恥や戸惑いより先に、相手は和彦にさらなる心地よさを与え始める。腹部から胸元にかけて、慰撫するようにてのひらを這わせてきたのだ。  違和感なく馴染む乾いた手の感触に、完全に警戒心を奪われる。それどころか和彦は、官能を刺激されていた。 「んっ……」  期待に凝っていた胸の突起をてのひらで擦り上げられ、思わず息を吐き出す。一瞬、手は止まりかけたが、すぐに何事もなかったように動き、指で軽く摘まみ上げられる。それどころか、熱い感触が胸元にかかったかと思うと、指で弄られていた突起をさらに熱く湿った感触に包まれた。  胸の突起を口腔に含まれたのだと察したときには、和彦は小さく喘ぎをこぼして顔を背ける。眠気で曖昧な意識に、与えられる感触は快美で、甘美だった。     
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