第4話(2)

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 相手の口腔に精を迸らせると、当然のように受け止められ、嚥下される。脈打つ和彦のものは舌で丹念に舐め上げられ、また口腔深くまで呑み込まれる。再び和彦の欲情を促すように。  すべての欲望を飲み干されてしまいそうな甘美な恐怖を覚え、小さく身震いする。だが、抗えなかった。  どうせこれは、自分が見ている都合のいい夢だ。しかも、淫夢だ。だったら、どれだけよがり狂おうが、誰にも遠慮はいらないと和彦は思った。  体を揺さぶられたとき、和彦の体を支配していたのは、心地いいけだるさだった。誰かにしっかりと包み込まれているようで、ひどく安心もできる。  持て余し気味の広いベッドの上で、こんな感覚を味わえるなんて、と吐息を洩らしたとき、一際激しく体を揺さぶられた。 「――……んせ……、先生」  和彦がやっと目を開けると、三田村が顔を覗き込んでいた。ぼんやりと見上げていたが、すぐに自分の痴態を思い出し、包まったブランケットの下で格好を確かめる。しっかりとバスローブを着込んでいた。まるで、たった今着せられたように。  それどころか、千尋に煽られたせいで体に留まっていた厄介な情欲の熱も、今はもう、溶けてしまったかのようになくなっている。  紐の結び目を指先でまさぐりながら、和彦はあくびを洩らす。 「なんだ……。まだ夜は明けてないだろ。というか、今何時だ」 「午前二時」     
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