第4話(2)

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 正気かと、三田村を軽く睨みつけた和彦だが、少し混乱していた。前髪に指を差し込み、ベッドに入ってから自分の身に起きたことを整理して考える。一方で三田村は、深夜だというのに、昼間と変わらない様子で淡々と言った。 「総和会から、至急の仕事が入った。どうしても先生に頼みたいそうだ」 「……お宅の組長は、総和会からの仕事はセーブすると言っていたぞ。それが、夜中から呼び出されるハメになるのか」 「総和会を構成する十一の組の一つに、昭政組がある。俺たちの認識としては、武闘派で有名なところだ。そこの組長が、総和会に泣きついたらしい。すぐに、美容外科医を連れてきてくれと」  和彦は息を吐き出すと、ブランケットを口元まで引き上げる。 「武闘派って、あれだろ。頭で考えるより先に、とりあえず暴れる人種……」 「本当のことだが、俺の前以外でそれは言わないでくれ。揉め事の火種になる。とにかく、そこの組長が騒いで大変らしい。総和会から、うちの組に連絡がいって、俺に回ってきた」  夜中に美容外科医が必要な事態とはなんだろうかと、頭の半分で考えながら、残りの半分では、さきほどのベッドの上での淫らな行為は、やけにリアルな夢だったのだろうかと考えていた。  そして、夢の中で和彦をよがり狂わせていたのは――。 「――先生、寝るな」  三田村に肩を揺さぶられ、ハッと我に返る。三田村の声を聞きながら、いつの間にか寝入ろうとしていたらしい。     
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