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和彦は時間を確認してから、帰ることを中嶋に告げる。初日ということもあり、今日はインストラクターにメニューを作ってもらってから、簡単に体を動かして引き上げるつもりだったのだ。
中嶋と別れてから、シャワーを浴びてロビーに降りると、辺りを見回す必要もなく、まっさきに目が合った人物がいる。三田村だ。
あんな場面を見たあとでも、賢吾は三田村を、護衛として和彦につけていた。
和彦や三田村を信用しているというより、何かことを起こす度胸があるならやってみろと言われているようだ――と考えるのは、単なる被害妄想なのだろうか。
賢吾の思惑はともかく、意識しすぎるせいか、慣れていたはずの三田村と二人きりで過ごす時間が、今は苦痛ですらある。
和彦の手からさりげなくバッグを受け取った三田村が口を開いた。
「――行こうか、先生」
もともと表情豊かな男ではなかったが、今の三田村は完璧な無表情を保ち、そこに凄みも加わっている。大事なこと以外話しかけてくるなと、和彦を威嚇しているようだ。
「ああ……」
たったそれだけの会話を交わして、二人は歩き出した。
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