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もう一度和彦の指をきつく握ってから、三田村が手を離す。その手が伸ばされ、和彦の頬に触れてきた。ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような無表情が印象的だった男は、今は、鬼気迫るような凄みを帯びた顔をしていた。
こんな三田村を怖いと感じながら、たまらなく欲しいとも思った。
互いにシートから身を乗り出すと、間近で見つめ合いながら、抗えない引力に引き寄せられるように唇を重ねていた。性急に三田村に唇を吸われ、二人は余裕なく貪り合う。
だが、こんなものでは、抱えた渇望は消えない。それは三田村も同じだと、目を見ればわかる。
このことを確認したとき、二人は完全に歯止めを失っていた。
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