第1話(2)

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「……ぼくの反応で、察しろ。もう、お前との遊びは終わりだ。もう二度と、ぼくに話しかけるな」  それだけを言い置いて和彦はまた歩き出したが、すぐに千尋が前に回り込み、腕を掴んでくる。今にも食らいついてきそうな激しい表情に、さすがに和彦は臆する。普段とは打って変わった凄みに、血筋なのだろうかと、皮肉半分、感嘆半分で思った。 「そんなんで、納得するはずないだろ。俺が何かして先生を怒らせたなら謝るから、きちんと話してくれよ」  今度はすがるような目で見つめてきた千尋だが、腕を掴む手の力は増すばかりだ。和彦はもう一度周囲を見回してから妥協した。 「話すのは、場所を移動してからだ」 「だったら、俺の部屋で――」 「ダメだっ」  和彦の反応に驚いたように目を見開いた千尋だが、次の瞬間にはスッと目を細めた。 「…… いいよ。だったらどこか店に入ろう」  千尋の提案に、やむなく和彦は頷いた。
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