第7話(4)

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「総和会にいる君ならわかるだろ。ぼくは、長嶺組に飼われている人間だ。組の許可なく誰かを診ることはできない。なんなら、ぼくから組に頼んで許可をもらって――」 『ダメなんです。組には知られたくない。……微妙な立場にいる人間で、組とは関われないんです』 「それなら、救急車を呼べばいいんじゃないか?」 『病院で診てもらったら、警察に連絡される危険があります。だからこそ、先生に診てもらうしかないんです。……手の出血もひどいし、息遣いも苦しそうで……。数人の人間から襲われたらしいんです。俺が電話で呼ばれて駆けつけたときにはもう、倒れていて』  和彦の良心としては、中嶋の頼みを聞き入れたい。だが、もしこのことを賢吾に知られたときが怖かった。それに、鷹津という刑事に付け狙われているかもしれない状況で、組に知らせず動くのは、危険すぎる。  さすがにそこまで中嶋に説明するわけにもいかず、和彦はひたすら断る。だが、中嶋は引き下がらなかった。 『お願いします。俺も、単なる知人や友人なら、先生に診てほしいなんて言いません。だけどその人は、俺にとって特別なんです。ずっと世話になりっぱなしで、何も返せていない。このまま何もしないなんてできません』     
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