第9話(3)

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 さすがに意表を突かれたように鷹津が目を見開く。和彦は賢吾を睨みつけたが、いつの間にか賢吾は、凄みのある目で鷹津を見据えていた。 「俺を潰したいからなんて理由で、こいつに近づくなよ。大事な大事な、俺たちのオンナだ。お前みたいな下衆が近づいていいような、安い人間じゃない」 「蛇みたいな男が、薄ら寒くなるようなことを言うな。……お前は、弱みを晒すような男じゃねーだろ。それとも、弱みを隠し切れないほど、そいつに骨抜きにされたか? 俺を失望させるようなことを言うなよ、クズどもの親玉ともあろう男が」 「しばらく辛酸を舐めたようだが、相変わらず口汚いな、鷹津。そんなんじゃ、誰にも好かれんだろ。それこそ、女だろうが、男だろうが――」  急に賢吾の腕が肩に回され、抱き寄せられる。和彦がハッとして賢吾を見ると、ニヤリと笑ってあごを掴み上げられた。 「おいっ……」 「鷹津が先生をつけ回すのは、先生の仕事っぷりが見たいからだろ。長嶺組でどんな役目を負わされているか、本当に俺の〈弱み〉になりうるか、とかな。だったら望み通り、先生の仕事ぶりを見せてやればいい。俺のものを咥え込むという、大事な仕事をな」     
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