第9話(3)

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 和彦は抵抗しようとしたが、有無をいわせず唇を塞がれる。呻き声を洩らしたときには強靭な舌が口腔に押し込まれていた。あごにかかっていた賢吾の手が移動し、両足の間に這わされたかと思うと、スラックスの上から手荒く和彦のものは揉みしだかれる。 「んんっ」  自分を侮辱した男の前で、賢吾との行為を晒したくなかった。ささやかに残っている和彦のプライドが軋み、悲鳴を上げるが、賢吾は力でねじ伏せてしまう。  ファスナーが下ろされ、入り込んできた指に形をなぞられる。ソファの背もたれに押し付けられながら、和彦が賢吾の体を退かそうともがいていると、嘲るような口調で鷹津が言った。 「おい、嫌がってるぞ。いくらヤクザのオンナとはいっても、少しぐらいはプライドがあるんだ。それを踏みにじるような酷なマネをしてやるなよ」  ようやく唇を離した賢吾が、ゾクリとするほど穏やかな声で応じる。 「鷹津、ずいぶんお優しくなったな。〈おまわりさん〉をやっている間に、多少はまともな人間性を取り戻せたか。……元からお前にそんなものがあったかどうか、俺は知らんがな」 「貴様っ……」 「刑事に復帰したと思ったら、俺のオンナのケツを追いかけ回す。どうした、こいつのケツが、そんなに美味そうか?」     
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