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人間臭いドロドロとした感情に支配された、見ていて吐き気がするような嫌な目だ。嫌悪と怒りが見て取れ、まとわりつくような不快な熱を放っている。まるで他人を搦め捕ろうとするかのように、粘ついた眼差しをひたすら向けてくる。
のしかかってきた賢吾にジャケットの前を開かれ、ネクタイを抜き取られてワイシャツのボタンを外される。
苛立ったように鷹津は舌打ちした。
「こんなもの、見てられるかっ。俺は男に興味はない。俺がビデオカメラでも持っていたら、喜んで録画して、バラ撒いてやるところだがな」
そう吐き捨てて鷹津が立ち上がった瞬間、賢吾は鼻先で笑ってから言った。
「逃げるのか、鷹津」
「……避難だ。こんな気色の悪いもの、見てられるかっ……」
「見極めねーのか? こいつが、俺にとってどれだけ価値があるオンナなのか。弱みになるのか。こんな機会は、もう二度とねーぜ。俺は、特定のオンナは作らない主義だからな。――先生が最後かもしれない」
鷹津を煽る言葉が、和彦の欲情を煽る。カッと体が熱くなり、触れられないまま紅潮する肌を、ワイシャツのボタンをすべて外し終えた賢吾が確認する。満足したように目を細めた賢吾が、優しい声で唆してきた。
「さあ、先生、この下衆な男に見せてやれ。自分がどれだけ、長嶺組の組長を骨抜きにして、惑わせているか」
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