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わざと下卑た言い方をして、賢吾が低く笑う。和彦を煽るためというより、鷹津に対する嫌がらせだろう。もちろん、こんな恥知らずな言葉を聞かされる和彦はたまったものではない。気力を振り絞って賢吾を睨みつけたが、あっさり跳ね返された。
「――先生」
賢吾に呼ばれて、口移しで氷の粒を与えられた。嬌声を上げ続けた喉が潤い、思わず和彦は吐息を洩らす。
もう一度氷の粒を与えられ、そのまま賢吾と舌を絡め合っていた。和彦の鎮まりきらない欲情を感じ取ったのか、賢吾がゆっくりと内奥を突き上げ、簡単に喘がされる。
そんな和彦を指して、賢吾は鷹津に言い放った。
「いいオンナだろ、鷹津? 俺の、大事で可愛い特別なオンナだ。……お前みたいな下衆が近づくなよ。先生が汚れちまう」
「汚物そのもののヤクザが、言えたことか」
「そのヤクザに寝首を掻かれて、一度潰された奴がいたな。そういえば――」
「だが俺は、刑事としてここにいる。お前を狩る立場にいることを、忘れるな」
会話を交わしながら賢吾がゆっくりと体を離す。急に激しい羞恥心に襲われた和彦だが、後始末をしようにも体に力が入らない。
密かにうろたえていると、ふとした拍子に鷹津と目が合った。また、嫌悪に満ちた視線を向けられるかと思ったが、鷹津は何も言わず顔を背けた。
「……ここは空気が悪い。帰るぞ」
立ち上がった鷹津に、賢吾が声をかける。
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