第5話(4)

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第5話(4)

 こんなに切羽詰った気持ちでラブホテルに入ったのは、学生のとき以来かもしれないと、ベッドの傍らに立った和彦は室内を見回す。  渋滞に巻き込まれながら、とにかく一刻も早く二人きりになれる場所を探すとなると、取れる手段は限られている。シティーホテルを見つけるより先に、たまたま空室のラブホテルが目に入り、車を進めていた。  普段であれば、自分たちが同性同士であることや、立場のこともあり、人目が気になってこんな大胆な行動は取らないだろう。だが、燃え上がった欲望は、なりふり構わず二人を行為へと駆り立てた。  人と会わなくて済むガレージ式の部屋だからこそ、ここまで大胆になれたのかもしれないが、と和彦はひっそりと苦笑を洩らす。 「――先生、何か飲むか?」  三田村に声をかけられて振り返る。ネクタイを解いた三田村に向けて首を横に振ると、次の瞬間には、やや乱暴にベッドに押し倒されていた。  いきなりスラックスのベルトを外され、下肢を剥かれる。その間に和彦も、自分が羽織っているジャケットの前を開き、三田村に脱がせてもらった。 「すまない、こんな場所で……」     
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