第1話(4)

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第1話(4)

 縫合した傷口を消毒してから、滅菌ガーゼを当ててしっかりテープで押さえる。これで、一通りの手当ては終えた。無事に弾を取り除き、傷ついた腸を縫ったのだ。  患者の脈拍は少し落ちてはいるが、許容範囲だ。話しかけても意識の混濁も見られず、ひとまず手術は無事に終わったといってもいい。怖いのは、こんな場所で手術したことによる感染症だ。  そのときはそのときだと自分に言い聞かせ、和彦は大きく息を吐き出す。どれだけ緊張していたのか自覚はなかったが、ワイシャツは汗でぐっしょりと濡れている。それだけでなくテーブルや床も、消毒でさんざん使った生理食塩水で水浸しだ。  すっかり嫌な記憶が染み付いてしまった血塗れのラテックス手袋を外すと、傍らのバケツに放り込む。 「患者の傷が開くから、慎重にベッドに運んでくれ。裸のままでもいいが、傷の周囲は清潔な布で覆っておくこと。それともちろん、シーツもきれいなものに。準備できたら、点滴をする」  そう指示を与えると、ふらつく足取りで和彦はキッチンに行き、手を洗う。ワイシャツもところどころ血で汚れているため、帰ったら処分しないといけない。     
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