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第2話(1)
ガキだ、と和彦は心の中で呟く。
わかってはいるつもりだったが、予想を超えて千尋はガキだ。しかも、厄介な癇癪を抱えた、二十歳のガキ。
和彦は露骨に大きなため息をついて、ゆっくりと足を組み替える。ガキの機嫌を取るほど、実は和彦にも心の余裕はなかった。
「――……何が気に食わないんだ、お前は」
そう問いかけると、正面のソファにあぐらをかいて座った千尋がふいっと顔を背け、ぼそっと答えた。
「何もかも」
「ああ、そうか。ぼくの存在そのものも気に食わないんだな。だったら、こうして向き合っていても時間の無駄だ。帰るぞ」
ぞんざいな口調で応じた和彦が立ち上がろうとすると、千尋が慌てた様子でテーブルに身を乗り出してくる。
「待ってよっ……。誰もそこまで言ってないだろ」
「話があると言って人を呼び出したのはお前だぞ。用件を早く言え。ぼくは忙しいんだ」
「……組の仕事があるから?」
子供のようにふてくされていた千尋が、今度は急に頼りない口調となる。
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