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第1.5話「ある兄妹の秘密会議」
ソルシアナが飛び出して行ってしまった事で、急遽招集された兄弟会議は打ち切られた。
「姉さん!?……兄様、ひどいよ!こんなの!!……姉さん、待ってよ!姉さんっ!!」
ネイトが慌てて後を追った事も理由の1つ。
私は溜息を着くとサロンに残った方の妹ーーフィーを見た。そして告げる。
「終わりだな。私は戻る」
立ち上がると部屋を出た。
頭が痛い。
ソルシアナもネイドルフも、下の兄弟たちはどうしてああも勝手気ままに振る舞うのか。
思考しながらゆるゆると歩いて自宅に戻る為、エントランスへ向かう道すがら、不意に背後から声を掛けられた。
「エル……」
この声は妹だ。
フィー。フィーネルチア。私と1つ違いの妹はソルシアナと違い声に抑揚が乏しい為すぐ分かる。
「何だ、何か用ーー」
何か用か、と問おうと振り返った矢先
ボグッ
腹部に強い痛みを感じた。
「づっ!?」
思わず身をくの字に折る。
見ると、ソルシアナやネイトよりも更に小柄な直ぐ下の妹が、小さな拳を思い切り私の鳩尾にめり込ませていた。
思わず咳き込む。
油断した。全く予期していなかった。
「な、何を……っ!?」
何をするんだ、と叱ろうとする。
するとフィーは感情の見えぬ凪いだ瞳と、淡々とした口調で私を責め立てた。
「やり過ぎ。あそこまでするとは……聞いてない」
「フィー……っ」
「ソラが何処まで知っているのか確認したい……そう言うから、私は協力した。なのに……酷い。可哀想に……ソラ、泣いてた」
「……っ」
その言葉に私は返答に詰まる。
分かっている。私とて決してソルシアナを責めるつもりなど無かった。
だがあの状況でどうしろと。
父に最後に会ったのはソルシアナで間違いない。
ならば彼女が何かを見ている可能性はある。
人間は追い込まれた時にこそ、その頭をフルに回転させる。人の持てる生存本能の1つとも言うべきか。だから私はソルシアナを意図して追い込んだのだ。
あの子は賢いが、少しうっかりした所がある。だから普通に考えさせては重要な手掛かりを見落とす事も考えられた。だからーー妹のフィーと一芝居打ったのだ。
ソルシアナ、お前が怪しい。
そう匂わせる事で、家族に嫌われる事を恐れる妹ならばきっと必死になって思い出そうとするだろうと。
その為にフィーにも協力して貰ったのだが、彼女はそれに大層腹を立てている様だった。
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