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2月14日 午後2時
「遅くなってごめん!」
「いや、いいよ。はい、これ」
夏子は紙袋を渡してきた。それは有名ブランドのチョコレートの袋だった。夏子は、毎年バレンタインデーにそのブランドのチョコレートをくれる。太一が好物だからだ。
太一も、持っている婚約指輪の箱を夏子に渡した。何か格好良いセリフを言いたかったが、夏子を前にすると緊張で何も言えなくなった。
太一はウキウキしながら、夏子から貰った紙袋の中の箱を開けた。だが、チョコレートだと思った箱の中は、太一が以前夏子にプレゼントしたネックレスだった。
「え?チョコは?これって、俺があげたやつだよな?どうした?」
夏子を見ると、渡された箱の中の指輪をちょうど見ているところだった。喜んでくれていると思ったが、指輪を見た途端、夏子は大きな溜め息をついた。
「こんなものいらない。貰ったプレゼントも全部返す。というか、話があるの。私ね、他の人と結婚するから、もう家には来ないで。今日で会うのも終わりね」
「は?どういうこと?なんだよ、それ……」
夏子は、太一の言葉を遮り、静かに言った。
「もう、待つのにはウンザリしてたのよ。兄弟が兄弟がって、あなたそればっか。もう疲れたの。それに、私には他に付き合っている人が居るし、あなたにあげるチョコレートはもう無いわ。今までのも返して欲しいくらい。付き合うんじゃなかった」
驚いて、太一は夏子をまっすぐ見て言った。
「夏子……待つこと納得してたんじゃなかったのかよ……」
すると、夏子は太一を鋭い目で睨んだ。長年の恨みが募っているようだった。
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