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それから、特に反論もなく検診などを行ったのち、少年とギルドに戻った。 少年にこれからの事を説明しようにも言葉を理解しているのか分からない。仕方なしにそのまま連れて行く事にした。 身体に宿るとされている魔力はまだ覚醒していないようであったが、20を越えるまで覚醒しない者もいるので、気長に待つ事にした。 ギルドに戻ってからちょうど二月が経った頃、少年はある程度なら喋れるようになっていた。 「ますたー」 「んー、父とは呼んでくれないのか~」 食堂でトレイを持ち此方に歩いてくる銀髪の少年。 あれから少しずつ言葉を覚えていき、名前は『レイ』、歳はたぶん15だと教えてくれた。ただ森に来るまでの事を覚えておらず、何か怖いものでも見て頭が忘れてしまおうとしたのかもしれない。 相変わらず綺麗な銀髪に紫色の瞳。 自身の持つ属性によって色の変わる事もある髪や瞳だが、この色からすると親の遺伝の色の可能性がある。 そのため、髪や瞳の色を中心に探してみたが、親と思われる人は見つからず、記憶もない事から何も分からない事に変わりはないが、苦労してきたであろう事は何となく分かった。 背丈は同年代に比べてそこまで低いわけではないし、たまに見せる行動から頭が悪いように感じない。 本当に言葉だけが付いていけていない、そんな感じがした。
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