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――少しして。
園部は俺の背中にゆっくりと腕を回した。
そしてさらに少ししてから俺たちは離れ、初めてその顔を見た。
暗い中でもわかるくらい、真っ赤になった園部がそこにいた。
「……覚悟はあるの」
「もちろん」
「私は我儘よ。絶対あなたも嫌気が差すわ」
「そんなのバレンタインから知ってるっての」
ふふ、と二人で笑う。
「じゃあ早速だけど、一つ目の我儘を言うわよ」
「おう、望むところだ」
「でも」
「ん?」
「まだ少し過去が邪魔をするわね……。こんなこと言っていいのかなって」
「何だよさっさと言えよ」
「もう一回」
潤んだ瞳と、目が合った。
「好きって言って抱き締めて」
――彼女の肩越しに見た夜景は。
来た時よりもずっと眩しく、きらきらと煌めいていた。
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