To be continued.

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「でもごめんなさい」 「え」  ぴしり、と。たったその一言だけで、彼の思考は瓦解した。それはすなわち、彼女が何を意味する言葉を発したのか、致命的なまでに正しく理解してしまったことに他ならない。 「君の気持ちはすごく嬉しい。でも、私たち出逢ってまだそんなに経ってないから付き合うのは難しいかも」  その響きは――何と空虚なことか。  彼はそれ以上身動きができなかった。彼女の言葉は、まるでがらんどうの洞を吹き抜ける風のように虚しくて、無力さで胸が締め上げられた。  だが彼女の言っていることは尤もだ。どう贔屓目に見ても顔見知り程度でしかないのが二人の仲なのに、肯定されるわけがない。納得できないわけじゃない。理解できないわけじゃない。だからこそ、彼はそれ以上の言葉が出て来ないのだ。それに勝る言い訳が、存在しない。 「は、はい」  何か答えねばならない。力なく彼はそう一言告げた。さっきまでの勢いはもう見る影もない。  なぜ言ってしまったのだろう。なぜ告げてしまったのだろう。激しい後悔が彼を襲っていた。せっかくいい雰囲気だったのだから、もう少し様子を窺えば良かった。焦る必要はなかったのだ。時間なら、まだ僅かとはいえそれでも残されていた。今日をきっかけにして、残りの時間でゆっくり関係を築いていっても良かったはずだ。なのに……なのに…… 「わたし、そろそろ行くね。さすがに友達も遅いもんだから、迎えに行って叱ってやるんだから」  彼の気持ちなど知る由もない彼女は、最後まで明るく接してくれた。それが却って痛々しかった。なんて愚かなことをしてしまっただろう。そう、思わずにはいられなかった。 「あ、はい」 「これ、ありがとう。とっても温かいよ。それじゃあね」  彼が買ってあげたお茶のことだ。喜んでくれて本当に良かった。意図的にそう思うことで、彼は辛くも理性を保っていた。本当は人目も憚らず泣き出したかった。あられもなく喚き出したかった。これですべてが終わったのかと思い、為す術もなくその場に呆然と立ち尽くした。
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