あるバレンタインの話

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「だったら清水の家まで迎えに行ってたのに」 「それだとほら……お母さんがうるさいからさ……」 「そうか」  絶対に鷲尾を家に上げてイルミネーションどころではなくなる。 「乗っていいぞ」  ガチャ、と運転席のドアをあけながら鷲尾がいう。しかし彼女は反対側の助手席側に行こうとしない。 「清水? どうした」 「あ……、あとさ、その……これ」  左手をおもむろに鷲尾に突き出す。そこには赤地に白いレース模様の入った紙袋がぶら下がっていた。 「先に渡しておこうと思って……」 「?」  意を決して言ったのに、鷲尾はなんのことかと不思議そうな目で紙袋と茉莉花を見た。
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