理央

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「付き合ってほしいんですけど」  図書館の片隅でそう声をかけてきたのは見たことのない男の子だった。小説を借りようか借りまいか立ち読みして吟味しているところで、部活をしていない僕は、放課後に図書館で勉強したり、本を読んだりすることが多かった。塾も行っていたが週二回だけ。ちなみに幸は美術部で、毎日行くわけではないが勉強よりは楽しいと言ってわりとまじめに通っていた。  変な本を読んでいるわけでもなかったが、手に取っている小説が何なのか見られたくなくてハードカバーのそれを少し下に傾けた。こんなところで告白してくるなんて勇気がある。だって周りにたくさん人がいるし、静かだから下手したら話してる内容が駄々漏れ。幸い僕は奥まったところにいたし、そこを狙ってきたのだと思うが。  突然告白してきたこの彼は、スリッパの色からしてたぶん一年生だと思われる。 「いや、僕は男なんですけど」 「格好だけじゃなくて?」 「格好だけじゃなくて」 「中身も?」 「中身も」  彼はそれでもまだ納得いかない様子ではあったが、僕の真剣な表情を見て諦めたようだった。 「そうですか。失礼しました」     
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