理央

3/10
前へ
/39ページ
次へ
 周知と言っても知らない人は知らないようで、時々告白してくる人がいる。今回は一年生。一年生なら知らなくても仕方ないかなとも思うが、この前は三年生。全校で千人くらいいるとやはり行き届かないものなのかもしれない。そりゃそうか、人は思っている以上に他人に興味がない。僕みたいな奴がいても、「ああ、男の制服着た女がいるなあ」くらいで終わってしまう。心の中で決着がついてしまうのだ。  男として生きる僕としても、中身は女だから告白されればうれしくないこともない。でもみんな僕の何を見てるんだろう。だって話したこともない、男子用ブレザーを着た女の子に告白なんて。それでもうれしいことに変わりはないけどやっぱり複雑な思いが渦巻く。結局人は人の何を見ているのだろうか。何も見ていないのか、見ていると思っているだけなのか。  そういえば蘭丸は僕のことをどう思っているのだろうか。病気のかわいそうな男の子って思っているのかもしれないがそれでもいい。同情でもいい。頭の隅っこにでも僕のことがあれば言うことはない。  そう、僕はあの日以来、蘭丸が気になってしょうがなくなっていた。久しぶりにまともにしゃべった男の子をほいほい好きになるなんてホント安易だなって思ったけど、どうしようもない。気持ちは簡単には変えられない。僕が見ている蘭丸はほんの一部分かもしれないけれど、一部分だけでもすごい好きだと全部が好きに思える不思議。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加