理央

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 最近蘭丸に会わないなあとちょうど思っていたとき、幸がスマホをいじりながら軽いノリで聞いてきた。 「休憩時間か、放課後にでも試合見に行く?」 「……何の?」  幸から試合観戦の誘いは初めてだったと思う。だから純粋に思ったのだ。「どうして突然?」と。幸もそれを察したようで半ば呆れるように言った。 「バスケ部。総体の会場にうちの体育館が使われてるんだよ。朝先生が言ってたじゃん」  なるほど、それで人通りが多かったのか。体育館側の階段や校舎と体育館をつなぐ中庭がいつもより賑やかだなとは思っていた。 「見に行く?」 「それは、蘭丸くんを応援に行こうってこと?」 「うん、まあ。優理の相手をしてくれる数少ない貴重極まりない神のような存在だからね」 「神……ああ、確かに。確かにそうだね」  僕は思わず、あははと声を出して笑った。女の子みたいな笑い方になったと思う。だってこんなときにする男らしい笑い方なんて知らない。 「今女の子みたいな笑い方だったよね?どうやったら男らしく笑えるのかなあ」 「そのままでいいんじゃない。心が男ならそのうち自然にそうなるでしょ」  穏やかな包み込むような眼差しで幸は僕を見つめた。僕の全てを知っていて思い切り抱きしめてくれるような存在である幸。でもごめんね、本当は心も女なんだ。幸と同じ女なんだ。 「ありがとう。僕は恋愛って意味では女の子が好きだけど、幸は男女の壁を越えた関係だって思ってる。そういう意味ですごく好きだよ」 「何よ、突然」  幸は面倒くさそうに、でもちょっぴり照れくさそうに眉を寄せた。
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