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幸と蘭丸
あの日から僕は贖罪を背負って生きている。他の誰に何と言われてもこれを下ろすことはない。理央を殺した罪が肩に重くのしかかる。いや、のしかかるという言い方は正しくない。望んでしていることだから。
「それで死んじゃったの?」
僕の話に真剣に耳を傾けてくれるのは、高校一年生のときに仲良くなった逢坂(あいさか)幸(ゆき)。唯一と言っても過言ではない数少ない友人の一人だった。男女合わせても本当に貴重な存在。
「うん。警察とか来てね、捜索してすぐに見つかったんだけど、救急車で病院に着いたときにはもう……」
「それって殺したっていうの?事故だと思うんだけど」
幸にはたいてい何でも本当のことを話していた。理央を殺したことも例外ではない。
「まあ、そうだね」
「何を気に病む必要があるの?すぐに自分が川に飛び込めばよかったってこと?」
「そうだね。僕だけ生きてるなら殺したのと一緒だから、川に飛び込まなかった時点で間違ってたんだ」
「冷静に判断しただけじゃない。飛び込んだら二人とも死んでたかも」
「冷静に判断できる時点でその程度なんだよ。あのね幸、幸に何て言われても僕の考えは変わらないから。僕が殺したんだよ」
幸を見つめてにっこりと微笑む。僕は幸が好きだ。幸の黒くて真っすぐな長い髪の毛みたいに素直でさっぱりした性格。だがそこには不満そうな幸の顔があった。
幸はスラっと背も高く学級委員とかやってそうな知的な才女に見えた。だからいつだったか気になって聞いたことがある。
「中間テスト何番だった?」
「何番だったかな」
サバサバした性格の幸でも、さすがに成績はあまり人に言いたくないのかな、と思ったらそうではなかった。幸は筆箱の中から小さく折りたたまれた紙切れをごそごそと取り出した。中間テストの結果表だった。そしてその紙切れをまじまじと見つめながら言い放った。
「総合順位だよね?二百七十六番ですね。ひっく!」
自分の成績なのに初めて見たような反応で、ははっと声を出して笑う幸。あまり成績を気にしていないようだった。一学年で四十人クラスが八クラスあり、退学した人もいた気がしたが、転入してきた人もいるし、二年生全部で約三百二十人といったところだろう。ひっく!と叫びたくなる気持ちもまあ頷ける。
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