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教室の教卓側のドア付近から聞きなれない低い男の声がした。窓際の僕の席まで聞こえてきたが、自分のことだと確信するまで席は立てないと思い、聞こえない振りをしていた。
「おーい、大沢。お前に用だってー」
クラスの男子が僕を呼ぶ。仕方なく席を立ちドアへ向かった。低い声の持ち主はものすごく背の高いほっそりした男で、初めて見る人物だった。そして彼が僕の顔を見下ろした瞬間に瞳孔が開くのを見逃さなかった。こういう目には慣れてる。第一声に放った彼のセリフ。
「ちっちゃ!お前ちっちゃいのな」
「……いや、君がちょっと大きすぎると思うんだけど」
「大きいことは大きいけど、それにしてもお前ちっちゃいよ」
「百五十ありますけど?(ぎりぎり)」
「ああ、俺は百八十七あるからな」
にやりと笑い、そのまま唐突に聞いてきた。
「トイレはどっち?女子トイレ?男子トイレに入るの?」
そんな質問されたことなかったので、内心びっくりしたが僕はすぐに答えた。
「職員トイレだよ」
するとその男ははっとして、すごい秘密を知ったみたいな喜びの表情を浮かべた。
「なるほどね、その手があったか!」
「うん、まあ」
「で、お前は結局どっち?男なの女なの?」
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