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「アニメみたいな名前で覚えやすいね」
親しく接してくれたことがうれしくて、いつもよりテンションが高めで言葉も笑顔も多くなっていた。
「アニメ?いや、森蘭丸だろ、普通」
「ああ、森蘭丸ね。アニメが先に思い浮かんだなぁ」
「アニメにそんなのあったかあ?もしかして日本史苦手?森蘭丸とかあんま知らない?」
思わず鼻で笑った。日本史は順位を落としたこともなく常に学年で一番だった。覚えればいいだけで勉強すればするほど成績が上がる得意科目だ。勉強がそういう単純なものばかりだといいのだけれど、数学や物理はそうはいかない。だから苦手だった。人の心みたいで複雑に絡まり合っていて、でも答えは一つしかないというのだから、そこが問題だ。
「日本史は得意だよ。とってもね。だいたい日本史に森蘭丸なんか言うほど出てこないと思うけどなあ」
蘭丸を見上げてにっこりと微笑んだ。
「あーそう。アニメみたい!は初めて言われたな。いや、初めてでもない……か?まあいいや!ちゃんと返したからな!」
そう言って昔からの友達みたいに蘭丸は手を振って教室を出た。廊下で待っていた友人らしき人物に何か話しかけられ、少し照れくさそうに笑ったのが見えた。今さっきまで話していた人とは別人みたいにはしゃいでおり何だかかわいく、子どもみたいに見えた。
席に戻ると幸が僕を不思議そうに見上げた。
「知り合い?」
「ううん、忘れた教科書届けてくれただけ。五組の蘭丸くんだって」
幸はポカンと口を開けた。
「知ってるよ、有名じゃん。一組とじゃ接点なかなかないけどさ」
そうか、有名なのか。僕らがいる一組と蘭丸のいる五組では同じ三階でも離れすぎていて授業が一緒になることはない。階段も別のものを使っている可能性が高く、見かけるタイミングも非常に少ないと思われる。
「何で有名なの?」
「一年生のころからバスケ部ホープで即戦力だったみたいだし、あの身長だからね。二年生になってからももちろんレギュラーみたいだし」
「なるほど」
「さらに頭もいいみたい」
「へー」
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