第3話 日常

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 夕食時、目を赤くし、真っ赤に腫れたお尻をさすっているジンは5人で食事を食べていた。ナギからのきついお仕置きを受けた後、ミシェルに土下座して謝らされたのだが、先ほどの件のせいで未だに気まずい。ジンが彼女の方にチラチラと目を向けると、偶然視線があった。しかしすぐに彼女が視線をそらして知らんぷりしてきたので、ジンはがっくりと項垂れてしまった。  彼にとってそれはナギのお仕置きの次に辛いことである。ここで姉に怒られことの方が辛いと思うあたり、ザックがジンのことを『シスコン』と称するのは的を射ていると言える。そしてそんな彼をザックがからかいながら、食卓に並べられた豪華なうさぎの入ったスープを4人は味わっていった。ジンには罰としてあまり肉が入っていなかった。  次の日、ジンたち3人はいつものように空き地で朝から修行をしていた。ジンの武器は二本の短剣を模した木刀であった。一方で相対しているザックの武器は彼のその体程もある大剣型の木刀である。二人はしばらく見合った後、互いに一気に距離を詰めた。それは彼らぐらいの子供の出せるスピードの限界を超えている。身体強化の術を使っていたからだ。身体強化は体内にある闘気と呼ばれるエネルギーを体に循環させることで可能になる技であり、コツさえつかめば誰でもできる、自然の力を用いる法術とは違う技術である。 「おらっ!」 交錯する中で武器が軽い分素早く動くことができるジンは双剣を巧みに扱い、ザックを攻め立てていった。 「ふん!」  それに対しザックは大剣を駆使して、左右からくる双剣を剣の腹で強く弾き、却って逆襲とばかりに、剣を弾かれバランスを崩し、右に重心が流れたジンへ上段からの斬りかかる。 「だらっ!」  上から来た大剣を、双剣を交差させることでガードする。ザックの攻撃は非常に重く、徐々に膝が地面に近づいていく。このままでは身動きが取れなくなると考えたジンは、腕に回していた強化のためのエネルギーを少し減らし、一瞬でそれを足に流して、全力で地面を蹴った。 「おわっ!?」  その勢いに押され、ザックの上半身が浮く。その隙を狙ってジンが相手に詰め寄り、胴に剣を叩き込もうとする。しかしザックはそれを読んでおり、バランスを崩した状態で、どうにか足を蹴り上げてジンの攻撃を防ごうとする。しかし胴への攻撃はジンのフェイントであった。
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