第3話 日常

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 だが避けたことでできた隙を狙ってレイが2つ目の水弾を放ってくる。それを予想していたジンは剣を使ってそれを弾き、さらに近づこうとする。だがそれを許そうとしないレイは、最後の水弾を放つが、ジンはそれをギリギリで避けながら再度、左手に残っていた剣をレイの胴体に投げつける。それを避けるために、とっさに目線を動かしたレイが直ぐにジンに目を戻したが、その一瞬の間にジンは後ろに回っておりの、首に腕を絡めて軽くしめてきた。それを受けてレイは降参した。 「また負けたか……」  レイは少し悔しそうな声を出した。 「でも今回は後ちょっとで負けそうだった。やっぱレイは剣士よりも法術士の方が向いてるんじゃない?」 それにザックも同調する。 「そうそう。わざわざ剣やる必要なくね?そんだけ法術使えるならさ。つか、今の試合全然剣使ってなかったし」 「でもやっぱりいざという時に剣が使えないと。法術だけだとさっきみたいな時に対応できないしね。でもどうしても術に集中すると剣がうまく使えないんだよなあ。あのサリカ様がどうやってるのか聞いてみたいなあ」  サリカとは近衛師団長であり、王国の5人の使徒のうちの一人である女性の細剣使いである。彼女はレイと同じ水法術を得意としており、さらにほかにも火属性、風属性を扱う三重属性保持者であった。非常に美人であり、巷では「姫騎士」と称され、レイの憧れの存在であった。彼女を語る時だけはいつも落ち着いているレイも興奮したように饒舌になった。 「サリカ様の水法術の演舞を前に見たんだけど本当に凄かったなぁ。何てったって、あの水弾の生成速度、しかもそれよりも高度な技も一瞬で作り上げちゃうんだからなぁそれに剣も王国で1、2を争うほどの腕前だし、それにあの凛としてて、それでいて誰にでも分け隔てなく対等に扱ってくれるのなんかも凄いよねそれから……」  レイの話が長くなり始めたので、ジンとザックがうんざりする。この話だけでもすでに10回は聞いたのだ。
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