第3話 日常

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「はいはい、サリカ様は素晴らしい、素晴らしい。そんで今の試合だけど……」  ザックが適度に話を聞いてから、試合で気づいたことをレイに話しかける。レイは話を遮られて少し不満げな顔をしながらも、それをしっかりと聞いた。 「今回もザックは、攻撃は早いけど、剣に振り回されている感じがしたよ。あとジンも言ってたけど、法術のコントロールが上手くないのに、使うのは危ないと思うよ」 「そういうレイこそ、法術ばっかりに気を取られてた感じだったぞ。ジンが投げた剣だって、意識の切り替えが早かったらもっとすぐに対応できただろ。」 「確かに俺もそうだと思う。レイは法術に自信があるせいで、想定外の行動をされるとすぐに慌てるんだよな。ザックなら俺が剣投げたら、避けずに弾くと思うし」 「ジンの場合はいつもの右に避ける癖が出ていたぞ。そのせいで動きを簡単に読むこともできたからな。でも相変わらず闘気の使い方はうまかったよ。それに咄嗟の判断も。まさか剣を投げてくるとは思わなかったよ」 「確かに。ジンが攻撃してくるときは大抵前からか、右からだよな」 「うっ。で、でも……」 「あとそれな。すぐに言い返そうとしてくるのとかな。年長者の意見はちゃんと聞かないとダメよ?」  ザックがナギの喋り方を真似ようと裏声で話しかけてきた。ムカついたジンは彼の肩にパンチした。  3人は稽古の後、いつも反省会をして、問題点を確認するのだ。これほど真剣に修行しているのに、ナギは彼らがチャンバラごっこをしていると思っていることをジンは少し不満に思っている。姉を守るためにしていることなのに、彼女はそれをお遊びだと考えているからだ。しばらく彼らが話をしていると昼食の準備ができたことをミシェルが告げに来た。  午後からザックやレイはナギから法術を教わることになっていた。彼女は非常に稀な光属性保持者であり、その上、火と風法術を扱うことができる三重属性保持者でもあった。さらにそれを戦闘にも用いてきて、戦いにおいてもジンたちよりも圧倒的に実力が上であった。一ヶ月ほど前に模擬戦をやった時は、3人がかりで向かっていっても、誰もナギに近づくことなく負けてしまった。
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