第5話 真実

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 表通りに出た彼女はまるで目的地が決まっているかのようにどんどん進んでいった。少年は黒髪が目立たないようにフードを目深にかぶり、姉を見失わない程度に距離を開けながら、どこまで行くのかを考えていた。そしてナギがふとある宿屋の前に立ち止まった。そして当たりを見回してから中に入って言った。ジンも中に入ろうかと考えたが、中から出てきた男が自分のことをゴミでも見るように顔をしかめて立ちふさがったので諦めた。 『姉ちゃんはこんなところにどんな用事があるんだろう。物乞いでもしてたのかな。それともここで治療をしてたのかな? それとも……』  それから一時間ほど物陰に隠れて待っていると、ナギが小さな袋を持って宿から出てきたのでナギは彼女に近づいた。 「姉ちゃん、何をもらってきたの?」 「ジ、ジン!?」  彼に気づいたナギは急いでその袋を後ろに隠そうとしたので、ジンは素早くそれを奪い取り、中を確認すると金貨が2枚入っていた。これだけあればいつもの食事の量で考えると、5人でも3ヶ月は食べられるだろう。 「これどうしたの?」 「それは……」 言葉を濁す姉を見て、ジンの頭を最悪な考えがよぎる。 「姉ちゃんまさか売りでもやってたの!?」  彼は声を荒げて問いただした。彼女の容姿は非常に優れているのだ。たとえスラムの孤児であっても、どんな男でも喜んで金を出すだろう。しかしナギは少し気まずそうな顔をする。 「ちっ、違うよ。そんなことでお金を手に入れたりしないよ。これは、その、これは、えっと。そ、それよりなんでここにいるの? レイから聞いた?」 「なんでもいいだろ! 姉ちゃんはなんで金がもらえたの? 前に家族の中で隠し事は無しって言ったのは姉ちゃんだろ!」  ナギはその質問に諦めたような表情を浮かべる。 「……それを言われたら困っちゃうなぁ。あまり言いたくないことなんだけどなぁ。でも流石にこれを見られたらジンも気になるよね。……ここで話すのもなんだし、一旦家に帰ろうか。夕食の後にいつもジンたちが遊んでる空き地にきてちょうだい」
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